グランデザインの技術
温熱環境
すてきな京都の町家づくり
夏は涼しい、冬はさらに冷えて寒い!?
日本では昔、夏を主とした計画で建物が建てられてきました。
京都に住んでいた頃、こうした建物に数多く訪れました。
確かに軒が深く、日射を遮り、通り土間を抜ける風により、
暑い京都でもこういった建物の中では比較的穏やかに過ごせました。
さて冬はどうでしょう?
寒い・・・とても寒い・・・
町屋の趣きに惹かれて、住みたいと思われる方もおられましたが、
その多くの方が断念する理由は、この寒さです。
現在には断熱材があるけれど・・・
暑さ寒さはまさに十人十色
寒さを改善するには、断熱材をたくさん使用すればいいのでは?
と思われる方も多くおられます。
確かにその効果はありますが、どの程度たくさんなのか分かりにくいです。
寒さとは感覚的なもので、人により違いがあります。
ドイツ滞在時の真冬にTシャツ姿の北欧人がいました。
寒くないのですか?と私が尋ねると、
故郷に比べるととても暖かいからTシャツで十分だと言われて
驚いたことを覚えています。
感覚の度合いというものは経験で推し量る必要があると思います。
今までに数十棟もの建物の温熱設計に携わり、様々な人の感覚を見て
感覚という点ではある程度網羅することができました。
経験の前提となる、
建物の断熱性能は数値で測定して評価
それに加えてQ値(熱損失係数)というものを計算することによって、
各建物ごとの断熱性能を数値により比較検討できます。
建物の内部と外気の温度差を1℃としたときに、
時間あたり床面積1㎡あたりに建物内部から外部へ逃げる熱量の指標です。
???分かりにくい表現ですね。。。
簡単にいうと、建物内部の暖かさがどの程度、外へ逃げてしまうのかということを表しています。
例えば、Q値1.0やQ値2.1というように表現し、数値が小さいほど断熱性能が高く、暖かさが逃げにくいということになります。
この検討は、屋根、壁、窓、床もしくは基礎、換気といった建物の部位ごとに計算を行い、導き出します。
各部位ごとに計算を行うので、どの部分をどの程度断熱を強化すればよいのかが一目瞭然となり、断熱性能向上におけるコストパフォーマンスを最大限にまで高めることが可能です。
次に疑問を抱くのは、Q値がいくつの住宅が最適なのか?
ということです。
日本では、各地域ごとにQ値いくつ以下にすれば省エネ住宅ですよという
基準があります。
それにより受けることのできる補助制度などもあります。
長期優良住宅の基準では、神戸市はQ値2.7以下となっています。(H24.4月現在)
今までの経験でQ値2.7という数値の住宅で、冬に太陽が差し込まないような場所では、正直にいって、暖房をかなり使用しないと寒さを感じます。。。
建築場所の条件や建物の形状によりQ値の扱いはかなり変わってきます。
Q値が良くなると、建築コストは上がるので、一律でいくつということは言えませんが、例えば神戸、西宮、芦屋では、海側でQ値2.4以下、山側でQ値2.1以下くらいです。
※あくまで、詳細な立地などの条件により異なります。
無冷暖房に近づけたいということで、Q値が1.0を下回る設計も可能ですが、建築コストと削減できる冷暖房費用についての比較も必要です。
C値(相当隙間面積)とは?
C値(相当隙間面積)とは総相当隙間面積cm2を実質延床面積で除した値です。
???またまた分かりにくいですね。。。
建物に隙間がどのくらいあるのか?ということを数値で表したものです。
この数値は計算ではなく、実際に測定を行い算出します。
C値は、数値が小さいほど隙間が少ないという表現になります。
関西圏では、C値5.0以下で気密住宅という基準があります。
私が、今まで携わってきた住宅のC値は1.0前後ですので、十分な気密性能といえます。
C値が良い(隙間が少ない)と、当然建物から逃げる熱も少なくなるので、
よりよい断熱性を保つことができるということになります。
それに加えて外気の流入の影響を受けにくくなるので、適切な換気計画が可能となります。
建物の断熱性能を高めるにあたって、何よりも重要なのは、現場での施工精度です。
机上で良い計画となっていても、実際に現場がきちんとなっていなければなりません。
経験豊富な施工業者と監理があってこその性能といえるでしょう。