Monthly Archives: 6月 2017

カブトムシと時間

先日、カブトムシ20匹すべてが無事羽化しました。
まだ羽化して間もないので、外に出てこず土の中でゆっくり過ごしています。

 

カブトムシとの付き合いも長いのですが、約1年で命をまっとうするのを見ていると、とても短い生涯だなと思います。
ですが、そう思うのは人間をベースに考えるからであって、カブトムシ自身は短いとか考えてないでしょう。

 

カブトムシと人間の時間の感じ方は同じとは言えないのです。

 

生物ごとに寿命が違うというのも不思議です。

 

寿命は同じだけど、時間の感じ方が違うということも考えられます。

 

もしすべての生物と呼ばれるものの寿命が同じだとしたら、
カブトムシの平均寿命1年=日本人男性の平均寿命80歳
となります。

 

では、カブトムシを人間の時間軸に合わせると、卵から羽化までが約8ヶ月なので、現在のカブトムシの年齢は、80歳x8ヶ月/12ヶ月=53歳です。

 

私よりすでに先輩です。

 

カブトムシの時間は我々人間の約80倍のスピードで流れているということを、否定することはできません。

 

その速度の中で彼らが感じてることを我々は感じることができません。
彼らからすると、我々の手が数ヶ月かけて徐々に近づいてきて、数ヶ月かけて角をつままれて持ち上げられる。
彼らからすると、どういう状況か理解できていないのだろうと思う。

 

我々も自らの意思で行なってると思ってることが、もっと大きな何かに操られているだけかもしれない。
我々はその存在を理解することはできないのだろうと思う。

 

久々にスケッチをしながら、カブトムシを注視していると、もっと頑張らねばと思うのでした。

 

IMG_2873

 

 

 

 

カテゴリー : pickup | 趣味

投 稿 日 : 2017年6月29日

一日の終わりに癒してくれる建築

建築に大切な照明。

 

それは、建物の中だけではなく、外部の照明も大切です。

 

夜は照明に照らされなければ、建物の色はモノクロに近づきます。

 

照明で彩ることで、昼間には見られない建物の表情がうかがえます。

 

太陽の光では表現できない、しっとりとした表情を見ることができるのです。

 

そういった表情も建築の魅力です。

 

疲れて帰ってきても、しっとりと穏やかな気持ちになれる、そんな建築は愛おしく思えるでしょう。

 

IMG_2619

 

この写真は最近竣工した住宅です。

 

板貼りの壁と軒天井がしっとりと迎えてくれます。

 

一日の終わりに癒してくれる建築。

 

ただいま建築。ありがとう建築。愛してるよ建築。

 

そんな気持ちになってもらえれば有難いです。

 

 

 

建築におけるシンプルという概念

建築においてよく使われる言葉、シンプル。
言葉の意味とおり、単純な、簡素な、飾られていない、構成する要素を減らすということです。

 

私の思うシンプルは、形状を構成する要素が少ないとかすっきりしているとかではなく、何をわかりやすく表現しているかであると思います。

 

表現のないものは、要素が少なくてもシンプルとはならず、ただ何もない何の変哲もない建築であると思う。

 

白と木のシンプルな外観というご要望をいただいたので、今回提案させていただいたお家では、内部空間を考えた上でそれに並行して、建物外観の白い壁が際立つように窓の配置を考え、壁が凹んだ部分の奥行き面に板貼りを施すことで、白い壁を面としてより強く認識できるように考えています。
壁を強く表現することで、それに包まれる空間が漏れる感覚が得られる。
白い壁の中から漏れ出る温かい空間。

 

DSCN5055

 

建築におけるシンプルの概念は、形状を整えるということではなく、どのようにシンプルに思想や形状や空間を表現するかということが、建築におけるシンプルの概念であると思います。

 

 

 

左官と建築空間

久々のブログ更新です。

 

なかなか忙しく、ブログで報告する話題はたくさんあるのですが、落ち着いて文章に換える時間がありませんでした。

 

ぼちぼちとブログ復活していきたいと思います。

 

さて、左官壁についてです。

 

舞鶴市で建築している美容院併用住宅の、レセプションの左官壁が完成しました。

 

建築にとってその空間にあるべきものを見出すということは非常に大切です。

 

このお店はスキップフロアで上下に躍動感のある空間となっており、とても面白いのですが、ある時その躍動感が散漫にならないように、空間を支配する、つなぎとめる存在が必要だと考えました。

 

力でねじ伏せるという支配ではなく、やさしく見守る象徴的な存在は必要だと考えました。

 

お店の玄関にある一枚の大きな壁。

 

この1階から中2階にまたがる壁をこの空間の要と考え、形状と表情を模索しました。

 

真っ白な室内空間にドシリと腰を据える丸く切り取られた壁。後ろ側はほんのりムクリ上がった優しい曲面。

 

土の表情が、この力強くも優しい形状の壁を、適切な存在へ導いています。

 

IMG_2668

 

象徴的な物の存在には意味と思想が必要です。
それを実現する技術も必要です。
そして、そのものを必要とする意思と場所が必要です。

 

西日が激しく差し込むので、奥に陽射しが入り過ぎないように曲面の高さや幅を設定しています。
裏から見るとその西日が後光のように神々しく左官壁の存在を強調しています。

 

IMG_2674

 

正面にあるお店のKのロゴは土の壁から削り出したような表現で、これからもいろんなものを掘り起こして新しい力を得てお店を発展させてほしいという思いもあります。

 

形を実現に導いた職人さんに感謝。

 

そしてこの身勝手な建築思想を受け入れてくれたお施主さんに感謝。

 

左官壁がこのお店の空間をつなぐ象徴であり、見守り続ける存在であるように心から願いを込めて。

 

IMG_2670