ポルトガルにトマールというところがあります。
ここには世界遺産登録を受けたキリスト修道院があります。
この日はリスボンの空港からバルセロナに戻る予定だったので、ポルトからリスボンに向かう途中に電車を降りて、少し寄り道してみようといった感じでした。
1、2時間ぐらいの滞在だったので、ほとんど街並みを見ることはできなかったのですが、このキリスト修道院だけは見ておくことにしました。
ポルトガルの旅で同伴していたアイスマンは一日早い便でバルセロナに帰らなければならなかったので、久々に一人でゆっくりできたところでもありました。
まず、トマールの駅を降りて、重い荷物をロッカーに入れておこうと探しましたが、見当たらず駅員に聞くと
「そんなものはない」と一蹴されました。
そしたらここで預かってくれと頼むと、渋い顔で「どのくらいの間だ」と聞かれました。
「2、3時間です。お願いします。」と応えると、
「2時間か3時間かどっちだ」と聞き返してきました。
「2時間半お願いします」と言うとようやく駅員室の片隅に置いてくれました。
日本では絶対にありえないことですが、ヨーロッパではありえないことがかなり少ない・・・結構なんとかしてくれます。
一路、修道院を目指して歩きます。
高台にあったので、街を抜けて丘を登ります。
そしてその丘の途中から、トマールの街を見下ろすと、リスボンやポルトやコインブラとは違う、なんとものどかな街並みが広がっていました。
立ち寄って良かった・・・。
到着。
キリスト修道院-1160年から17世紀にかけて騎士団の拠点になりながらも増築等を重ねて、現在の状態になりました。
長年の可変により、ロマネスク建築、ゴシック建築、マヌエル建築、ルネサンス建築といった様々な建築様式が見られます。
細部に至るまで、美しさを追求した繊細な建物です。
でも一番、美しいと思ったのは、騎士団や修道女が暮らしていたらしき部屋。
何もない部屋・・・。
漆喰で塗り固められた壁の一部のアルコーブにベンチが一体となり、その天井部分に申し訳程度の装飾があるだけでした。
この窓の光で聖書を読んでいたのでしょうか
それとも外の街の賑わいを想像していたのでしょうか?
建築と一体になった、用が集約した空間はなんとも神秘的です。
そしてトマール駅に戻り、駅員さんに預けていた荷物を取りに行きました。
すると楽しそうにカードゲームか何かしていました。
そのうちの一人がそこに置いてあるという仕草をして会釈してくれました。
Muito Obrigado(ムイント・オブリガド=とてもありがとう)
これが一番良く使ったポルトガル語です。
みんなが「ありがとう」とたくさん言える環境は本当に素晴らしいと思いました。
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Category Archives: ポルトガル建築
リスボン オリエンテ駅 =Gare do Oriente=
この間書いた、サンティアゴ・カラトラバのモンジュイック・タワーで思い出しました。
彼が設計した駅のことを。
ポルトガル、リスボンにあるオリエンテ駅です。
1988年のリスボン国際博覧会に合わせて建設された駅です。
リスボンメトロ(地下鉄)や近郊列車、そして高速鉄道の拠点となっている駅です。
ホームは白い木の森のようです。
実に軽快かつ鮮やかなフレームの集合体です。
この建物を見て感じたことは、建物が際立っているということ。
周囲を統括というか、支配的というか、でもそんなに偉そうじゃない・・・。
写真を見ての通り、コンピューターグラフィックのような鮮やかさです。
どこかフェイクのような違和感がありながら存在するという矛盾・・・。
これを見込んで設計したというなら、カラトラバはやはり宇宙人と交信している可能性があります・・・。
以前、リスボン、ポルト、オビドス、ロカ岬について書きましたが、このオリエンテ駅からポルトガル第2の都市ポルトに向かう途中にコインブラという町があります。
ポルトへ行く途中、そこで降りて昼食をとることにしました。
以前のブログで紹介したアイスマン・・・そう、このポルトガルの旅の同士です。
次回コインブラにて・・・。
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ポルト 2 =Porto 2=
坂道を登り続けてようやく橋の上に着きました。
この橋には路面電車が通っていました。
なるほど、ドウロ川の対岸とを行き来するための大事な交通機関なのです。
目の前に思い描いていた景色が広がりました。
これです。これを見たかったのです。
川から緩やかに傾斜していく、オレンジ色の丘・・・建築が風景を造るという典型的な絵です。
大自然の絶対的な美しさとはまた違った、人間の生活文化と長い年月と自然との無理のない融合を見たような気分です。
この景観を誰も壊そうとは思いもしないだろう。だから残っているんだろう。
大人達が子供にこの景色の大切さ、それに至った意味を代々受け継いでいるのだと感じました。
それほどの感動でした。
「グレートな景色だね、アイスマン。」
・・・「なっ何~っ!!」
お疲れの様子でした。アイスマンにとっては自国と比べてそんなに美しい景色でもないのか、それとも鈍感なのか。
前者であってほしい・・・。
そうこうするうちに時間は経ち、アイスマンは帰らないといけない時間になりました。
アイスマンはボクとは違うバルセロナ行きの飛行機なので、この日のうちにリスボンに戻っておかないといけません。
とりあえずユースホステルに荷物を置いているので、取りに行くことにしました。
がしかし、ユースホステル周辺行きのバス停がなかなか見つかりません。
次第に時間がなくなっていき、アイスマンも苛立ち始めました。その間も人に聞きながらようやくバス停を見つけたボクは、アイスマンを連れて行きました。
「本当にここで合っているのか?もう時間がない。」などと言ってきました。
「合ってると思うで。(いやいやアナタのために探したのに、その疑いはなんですか?)」と、若干イラっとしながら答えました。
それに気付いたのか、不穏な空気が流れはじめました。
ようやくバスが来て、乗り込みました。
そしてその途中で、アイスマンがバスから見える景色の中の時計を見て、
「うわっ!間に合わないじゃないか!」と言いました。
ボクも自分の時計を確認しました。外の時計が1時間早く進んでいました。
「大丈夫。あの時計は時間がズレてるだけやわ。」「まだ十分間に合うで。」と答えましたが・・・。
アイスマン:「スペインとポルトガルは時差が1時間あるから間違えてるんじゃないの?」
ボク:「ちゃんと、合わせてるから大丈夫やって。」
アイスマン:「いや、でも、あの時計ちょうど1時間早かったし・・・。」
ボク:「合うてるゆうてるやん!」「それにスペインの方が1時間早いやろ。」
(時計を合わせていなかったらボクの時計の方が1時間早いなずです。)
ホンマこいつって感じです。
ユースホステルの時計を見てようやくボクへの疑惑が解けたらしく、
「アイム・ソーリー・・・おれが悪かったよ。最後の日にこんな感じになって本当にアイム・ソーリー・・・。」アイスマンはしょんぼりとしていました。
ほんまアイム・ソーリーちゃうで。たのむわっていう思いで応じました。
「じゃあ、またバルセロナで。」と、二人は別れました。
後日、彼とは前以上に仲良くなりました。
一緒に長い時間を過ごして、お互いの感覚が前より深く理解できたのだと思います。
そうやって友達と仲良くなっていくことを、シンプルに再認識できました。
少しだけ空を飛べる気がしました。
ポルト 1 =Porto 1=
ポルトガルで一番楽しみにしていた街がこのポルトです。
「魔女の宅急便」の原風景となった場所です。
ジブリ映画で「魔女の宅急便」が一番好きです。
素直さや、嫉妬や、悩みを魔女の魔法と比較しながら、無理なく表現しているところが、とてもいいです。
そして舞台となった街、空を飛ぶキキの背景としての素晴らしい景色がすごく印象に残りました。
これこそヨーロッパなんだと、子供の頃に初めて街並みというものに影響を受けたことを覚えています。
こんなキレイな街に行きたい、住みたいと心に思いました。
期待満々で行くと、だいたいが裏切られます。
電車でポルトの駅周辺は、さほど他と代わり映えもなく、普通にバスに乗って中心地まで移動しました。
しばらく行くと・・・「出たっ!!!時計塔!!!」「いや、映画とは少し違うか?」
映画に出てくる時計塔のモデルはオーストラリアにあるそうです。後で知りました。
そして川に向かって歩いて行くと・・・「出たっ!!!フェラーリ!!!」
これはアイスマンが必死に「写真一緒に撮っとけって」と言って、無理矢理撮られた写真です。何で必死なのか分かりません。イタリアやし。
「おお~これは・・・映画の風景に似てるような・・・。キキがこの街に住み始めてすぐに日用品を大量に買っていた通り・・・。」
こんなことを考えながらも、隣にはアイスマンがいます。飯のことしか言わない彼は、散策コースをこちらに任せきりの毎日です。
そんな彼は、マクドナルドを嫌います。「栄養が偏っていて、こんなもんアカン。」と言っていたことがあります。でもSUBWAYには頻繁に通っていました。野菜が多いけど、似たり寄ったりだと思います。それにケバブもよく食べてるし。
ドウロ川にようやく出ました。このドウロ川に向かって軒を連ねているポルトの街並。あの橋の上に行かなくては見えません。
「結構遠いな・・・。」でも楽しみです。
上を目指しているとアイスマンは疲れてきたみたいです。「いやいや、さっき休憩したとこやん。」と思いました。
なかなか回復しないアイスマンと別行動したくなってきました。四六時中一緒にいて、モチベーションが違ってくると、だんだんしんどくなってきます。
「オレ、今、空飛ばれへんやろな・・・。」そんなことを思いました。
たぶんもっと言葉が通じたら、細かい表現を言葉で伝えられたら、もっと楽だったのかもしれません。
それまでなんとかなってきた言葉の壁を大きく感じた瞬間でした。
心さえあれば言葉なんて適当でも伝わると思っていた自分への、試練でした。
結局言葉があったら、適当なウソも言えるし、思ってもいないことを言葉にすることだってある。
しかし本心は、語学が達者な人が喋れない人を見下している(全員ではありませんが)、その態度が気に入らなかったのかもしれません。
なんともみっともない話です・・・。
次回「アイスマンとの絆・ポルトの本当の風景は・・・」です。