Category Archives: ドイツ建築

ベルリン・フィルハーモニー =Berliner Philharmonie=

ボクが滞在していたベルリンのユースホステルから歩いて5分ぐらいの所に、ベルリン・フィルハーモニー管絃楽団の本拠地であるコンサートホールがありました。
皆さん1回ぐらいは耳にしてるかと思います。
ベルリン・フィルハーモニー1
オーケストラとかはそんなに詳しくないので、「凄いんだろうな~。」「格式が高いんだろうな~。」という感覚しかありませんでした。
建物の前までは行けても、なかなか中に入ることができません・・・。
ベルリン・フィルハーモニー3
寒いので、耳あてのあるニット帽に、厚手のジャンパーのようなコートのようなものを羽織って、更にその下にもウインドブレーカー的なものを着込んでいます。
小奇麗な服など、持って行ってなかったので、かなり怪しい感じでした。
ベルリン・フィルハーモニー2
でも、ここまで来てそんなことを気にしていてもしかたないので、平静を装って中に入ることにしました。
ものすごい注目を浴びるかと思っていましたが、みごとに無視です。
まるで、自分が空気のようです。
いや、昆虫くらいかもしれません。
視覚では捉えているけど、その情報は脳には到達せず、熱エネルギーに一瞬で代わって、体外に捨てられる感じだろうと思います。
意識されないからといって、好き勝手に建物内を廻れるわけではありません。
彼らの領域に踏み込んだ瞬間、踏み潰される恐れがあります。
自分に害のないところでは見て見ぬフリですが、少しでも不快に感じると容赦しません。
彼らはそういう生物です。
少し昆虫の気持ちが分かった気がします。
ですから、これ以上は入れません。
カメラ禁止マークの前での撮影、これが限界です・・・。
ベルリン・フィルハーモニー4
奥のガラスブロックが輝かしいです。
この建物はベルリンの建築家である、ハンス・シャロウンにより、1963年に完成しました。
シュトゥットガルトで近代建築の巨匠のコルビュジェミース、グロピウスらと共に集合住宅の設計をしています。
その他、有名な建築物を残した素晴らしい人です。
ベルリン・フィルハーモニー管絃楽団の定期演奏会の他、特別公演なども行われています。
建物単体では少々シンボリックな印象と、それでも曲線を使うことによって、周りの空間に溶け込むような、どこか優しい印象を受けました。
夜になれば尚、光と闇にぼやけて溶け込むそんな感じです。
コルビュジェミースよりも有機的で優しさを備えた造形だと思います。
何よりも昆虫の気持ちをリアルに体験できるところが、最大の魅力です


去年の5月に、この建物で火災が起き、幸い死傷者はいませんでしたが、修復作業の為しばらく閉館しています。
もう復活したのでしょうか
早く元の姿になってほしいです。

DZ銀行 =DZ-Bank=

ブランデンブルグ門はベルリン世界陸上マラソンのスタート地点でした。
ブランデンブルグ門
これは旧王宮へ至る目抜き通りウンター・デン・リンデンの新古典主義様式の門です。
アテネのアクロポリスの城門プロピュライアをモデルにしたそうです。
プロピュライア
<アテネ、アクロポリスにあるプロピュライア。崩れていてよく分かりません。>
この門がある広場の一角にDZ銀行はあります。
DG-Bank1
外観は静かな佇まい。
しかし、中に入ると、膜状の天窓の下に巨大な魚の彫刻がいます。
そしてその下は地階の会議室のガラス天井がうねっています。
DG-Bank2
さぁこの設計をした人は
そうですゲーリーです。
ゲーリー・グッドリッジ(格闘家)ではありません。
フランク・オーウェン・ゲーリー(建築家)です。
航空力学・機械設計向けソフトを建築に用いて、複雑な形態を構造的に解析しています。
複雑な造形でかつまとまった組織体とするのは彼の特徴です。
「ゲーリーって誰」という神戸人はメリケン波止場にある魚のオブジェを設計した人と言えば分かりやすいですね。
ちなみにメリケン波止場のメリケンは「American」の発音を昔の人がメリケンと聞いてカタカナにしました。
メリケン粉やメリケンサックなどもそうです。
終戦語は「アメリカン」という表記に修正されました。
曲線はやっぱりいいです。
自由な曲線を制御するのはとても難しいです。
曲線が複雑で、自由であるほど扱いにくく、制御できなければただの暴れん坊になってしまいます。
上手にまとまったなら、とても生き生きとした躍動感を内包した容になるでしょう。
厳密に言えば直線は存在しないのであるから、曲線を上手に使うことを常に意識しなくてはならないのかもしれません。
曲線、曲面、ゲーリーさんには多く学ぶことがあります。

新ナショナルギャラリー =Neue Nationalgalerie=

世界陸上ベルリン大会も閉会しました。
とても熱いシーンの数々を見ることができました。
昨日最終日のマラソンでは、尾崎好美さんが銀メダルを槍投げの村上幸史さんが銅メダルを獲得するという、とても素晴らしい締めくくりでした。
ボクもベルリンに少し滞在していましたが、とても素晴らしい街です。
ドイツ人は礼儀正しく、街並みも清潔で、特に歴史的建造物と近代建築、現代建築がうまく融合されています。
今回のマラソンのコースでは数々の名建築も見ることができました。
その中のひとつ、1968年に完成した、近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエにより設計された建物。
新ナショナルギャラリー1
Neue Nationalgalerie =新ナショナルギャラリー=
この建物はミースの遺作となりました。
1辺65mの巨大な格子梁が8本の鉄骨柱で支えられています。
まるで、鉄骨の重量感のある屋根が宙に浮いているようでした。
新ナショナルギャラリー2
その重量感故に、余計に宙に浮いていることが強調されています。
1階は多機能な企画展示として用いられ、主に地階が美術館としての機能を担っています。
新ナショナルギャラリー4
新ナショナルギャラリー3
自然素材の利用が叫ばれる昨今では、「鉄とガラスの建築」というものは冷たく感じてしまいそうですが、鉄とガラスという素材を極限まで活用した彼の建築は、物体による豊かさや空間による豊かさを感じることができます。
ボクにとっては自然素材をただ使って、「エコハウスです。」と言っているほうが、よほど冷たく感じます。
自然素材を使ったとしても、その物や、空間に心がこもっていないと、貧しい建築になるような気がします。
貧しい建築に住むと、住人も貧しい考え方になるでしょう。
高性能な家に住むよりも、心が豊かになる建築に住み、ひとつの箱の中で完結せずに、周りとの付き合いや、共同意識を持つ-、その方が大切だと思います。
これこそが、ミース独自のユニヴァーサルスペース(無限定空間)の真意なのかも知れません。
新ナショナルギャラリー5
話は変わりますが、ドイツ人は信号を守ります。
たとえ3mほどの道路でも、車が1台も走っていなくても、赤信号であれば横断歩道を渡りません。
これも心のゆとりからなる行動なのかもしれませんね。