Category Archives: スペイン建築

カサ・バトリョ 2 =Casa Batllo 2=

カサ・バトリョの増改築は1904年~1906年の約2年間かけて行いました。
ガウディがこの建物に表現したのは、聖ゲオルギウス(カタルーニャ語でサン・ジョルディ)と悪竜でした。
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左:カサ・アマトレール 右:カサ・バトリョ
聖ゲオルギウスとは、スペインのカタルーニャの守護聖人。
悪竜への生贄に選ばれた王女を救ったという伝説上の人物。
王女はキリスト教を、悪竜は異教を表しているそうです。
だからゲオルギウスは、異教からキリスト教を救った英雄だということです。
屋根は竜のウロコを表現し、壁は地中海の模様を描いています。
バルコニーの手摺は聖ゲオルニクスに退治された竜のシャレコウベでしょうか?
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バルコニーの手摺?
向かって左よりにある竜のウロコの屋根に突き刺さってある煙突は、聖ゲオルギウスの盾に刻まれていた十字架と言われています。
最初は真ん中に設置する予定でしたが、
「カサ・アマトレールのシンメトリー(対称性)のデザインをカサ・バトリョで台無しにしてはいけません。
互いにシンメトリーを強調しあえば、どちらも生かされず、街並みも連続性がなくなってしまうでしょう。カサ・アマトレール側に煙突を寄せることで、両建築の良さを引き出すのです。」
と、ガウディは助手たちに説明したそうです。
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竜の背中のような屋根
最近では隣の家のことなんてお構いなしにデザインして、それ単体で完結してしまう建築物が数多く見られます。
ガウディは自分の思いを建物にのせるとともに、愛すべきスペイン、カタルーニャの街並みを守っていこうとしていたのかもしれません。
建築は競争競技ではないと思います。目立てばいいとかオシャレならいいとか、そういうものではないと思います。
まずそこにある意味をしっかりと捉えることが大切なのではないでしょうか。
それが、街並みにつながり、地域性となり、文化となり得るのだと考えています。
妥協することなく、自分の道を貫いて、これらを建築物に表しつづけたガウディさんは皆の憧れでないはずがありませんね。

カサ・バトリョ 1 =Casa Batllo 1=

ガウディが増改築を行ったカサ・バトリョ。
バルセロナのパセオ・デ・グラシア通りに面して建っています。同じ通りに面してバトリョさんをガウディに紹介したミラさんの建物もあります。
バトリョさんもミラさんも共にブルジョアです。
この仕事の依頼を受けたガウディは建て替えを行う集合住宅を見に行き、
「立派な建物です。建て替える必要はありませんね。」と、バトリョさんに言ったそうです。
それを聞いたバトリョさんは慌てて、「それは困る。この間、隣にカサ・アマトレールが建ったおかげで、私の建物は貧相に見えてしまう・・・。」
「目立つためなら金にいとめはつけない。」・・・ブルジョアの考え方です・・・・。
(カサ・アマトレールはガウディの12才年下のジョゼップ・プーチというバルセロナでも有名な建築家によって建てられました。)
ガウディ:「それでは、増改築にしましょう。」
バトリョ:「それでは目立たないんじゃ・・・。建て替えたほうが・・・。」
ガウディ:「おまかせください。」
バトリョ:「あっ、はい、まかせましょう。」
こんな感じで増改築が始まったそうです。ブルジョアでさえも、従わせるガウディさん・・・さすがです。
そして出来たのが、これです。

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向かって左隣がカサ・アマトレール
「まかせて下さい。」と言ってこれを造ってしまうガウディさんはヤバイです。
関係ありませんがボクも唯一ブルジョアな気分を味わえることがあります。
それはガソリンスタンドです。
今はほとんどのガソリンスタンドがセルフになっているけど、未だに一回もセルフでガソリンを入れたことがありません。入れ方も分かりません。
そうブルジョアが電車の切符の買い方を分からないように・・・。
スタンドの店員に「うむ、満タンにしておいてくれたまえ。」「うむ、窓も頼むよ。」
こんな気分です。
しかし、入れている燃料はレギュラーガソリンです。この辺が中途半端なところです・・・。
次回は、続・カサ・バトリョ~天才の仕事~です。

バルセロナのマンション

バルセロナの中心では一軒屋は全くなく、マンションか、ビルか、アパートかといった感じです。
その中でも、新しくできた特徴的なものでバルコニー全体に可動式のルーバーを設置したものがありました。
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↑強烈です
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↑個々のルーバー角度が調整できるみたい
バルセロナは日本と比べて夏でも乾燥しているので、日差しさえ遮ればとても涼しく過ごせます。
そういうことから、こういった建物が設計されるのでしょう。
写真の建物を見ていると、個々の住戸が全体のデザインを構築しています。
日本でもこういったデザインの建物はありますが、あくまでデザインが先行しているような感覚を受けます。
それとは違って写真の建物を見ていると、「ルーバーたくさん入れとけよっ!必要なんだからっ!色ぐらいは合わせとこうか。」というような思い切った印象を受けます。本当は緻密に設計されていると思いますが・・・。
非常に分かりやすい明快なプロポーションです。
日本にも用の美という言葉があります。必要なものだけで造られたものは何にも偏ることがなく、無理もせず初めから淘汰された美しさがあります。
その中でも扇子が一番好きです。持ち運び易く、開くとそれなりの大きさになる。そして持ち易く、仰ぎ易い。
なんともあの無駄のない広がり方が美しいと思います。
意図してできる美しさではないので、難しいですがこういうことを常に考えていきたいです。

カサ・ヴィセンス =CASA VICENS=

ガウディが手がけた初期の住宅であるカサ・ヴィセンス。
濃いいー!!!!!
見た瞬間はレゴブロック?というような幾何学的に規則性のある外観。
多分レゴを使ったらかなりの精度で再現できるはず。
イスラム建築のテイストが強く感じられる、とても力のある建物。
日本で建てたら、楳図かずおさんのまことちゃんハウスのようにバッシングされるでしょう・・・。
ここまで細部に神経がいきとどいた作品を見ると、コストバランスを考えて既製品を多様するという行為が虚しく思えてきます。
それはそれで、決して悪いことだとは思いませんが、やはりモノを造る職業として、唯一無二のものを造り出したいという気持ちは強くあります。
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↑ちょっと迷って路地の奥に見えてきました。
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↑濃いいー!!
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↑この繊細な仕事には圧倒されます。
幸い中にも入る(侵入?)ことができました。ドアが開いていたので、入って人を探していたら、奥から大慌てで女の人が侵入を阻止しようとして来ました。
こういう時だけ、観光者のフリをするのは汚いと思ったので、「建築の勉強をしています。ガウディの設計した家が見たいのです!」
と、侵入を阻止しようとする女性に熱く投げかけました。
が、一撃で入口まで追いやられて終了です。
あの女性は何者だったのか?
そんなことは特に気にしていませんが、この熱い思いを阻止した冷徹さに完敗です。
カサ・ヴィセンス発売中というサイトを見つけました。
きちんと維持管理をしてくれる人を探しているみたいでした。
大変興味深いですが、買うのではなく造りたいです!!