昨日、友達と話をしていたら、遠く忘れていた人を思い出しました。
送電線工事の現場監督をしていた時に、一緒に仕事をしていた現場作業員の責任者トキさんです。
東北地方出身のとても寡黙な人です。
少し目が弱いらしく、いつも色メガネをかけていました。
<トキさん。本名です。>
舞鶴の山奥で送電線の工事をしていた時のことです。
送電線鉄塔を建設する前に、鉄塔敷地を伐採するのですが、そこでかなり手ごわい大木に遭遇しました。
まずはチェーンソーで、受け口(倒す方向)と追い口(倒す方向と反対側)を木の幹に切り込んで、追い口に楔を打ち込んでいきます。
通常なら楔を打ち込むごとに、受け口の方向へ徐々に木が傾いて倒れます。
しかし、この大木は違いました。
山の猛者たちが4人がかりで、ロープでひっぱても、楔を打ち込んでもびくともしないのです。
たぶんこの作業員達は素手でイノシシぐらいなら倒せると思います。マジで。
木の切り口を広げるのは、一気に倒壊する恐れがあるので、とても危険です。
どうしようかと、もがいていると、休憩中だったトキさんが白いランニングシャツ一枚で、近寄ってきました。
「なにをしとるんや?寄ってたかって。」と、大木の前に一人で立ちました。
「みんな、どいてみぃー。」とトキさんが一人で、大木を押し始めました。
その瞬間、今でも忘れません、トキさんの体の周りの何かが白く飛び散ったのです。
と、同時に大木が一気に傾いて、倒れました。
そして、ゆっくりとボクの方にトキさんが近づいてきて、
「シャツ破れてもたわ~。」と言ってまた、木陰に横になって休憩を始めました。
初めてです!力を入れた瞬間、伸縮性のあるランニングシャツが破れて、飛び散るところを見るのは・・・。
この話を、上司や先輩に話しても誰も信じてくれませんでした。
トキさんも寡黙な人なので、この伝説は徐々に薄れていくんでしょう。
でも、ボクが伝えていこうと思います。
北斗神拳は本当に存在するということを・・・。