住宅のプランしている時に、「住宅とは?」ということを自分自身に問いかけます。
日本最古の住宅と言われるいる竪穴住居にまで遡って考える必要はないのかもしれませんが、
私はこの竪穴住居というものにとても魅力を感じます。
何故かというと、住宅として不必要なものが見当たらない。
そして建築として地中をも空間の一部として利用しているということです。
土地に小屋組だけが建っているような外観ですが、
地面に50cmほどの穴を掘ることによって、内部空間の高さを確保しています。
当然外の地面より室内の床が下がりますから、雨仕舞いが悪いという問題はあります。
そしてそれを改善するように、屋根を持ち上げるような構造に進化していきます。
我々はその進化の過程を経験したわけではなので、
柱や梁に支えられ、窓があり電気や水道がありという住宅が当たり前なのですが、
それでもそれに囚われすぎるのもどうかと考えてしまいます。
スペイン滞在中に、訪れた集落を思い出します。
グラナダの東60kmくらいのところにグァディクスという場所があります。
そこにジプシーの洞窟住居が軒(?)を連ねています。
洞窟いわゆる横穴住居です。
小高い丘に白い煙突がニョキニョキと生えています。
家族で1ヶ月ほど土を掘ると4m四方(9.5帖)ほどの部屋ができるそうです。
そして漆喰で塗り固めます。
子供が生まれたら部屋を掘るといったイメージでしょうか。
必要なときに必要なだけ空間を造りだすので、無駄なものはできようがありません。
日本やその他多くの国の住宅が何もないところに材料を持ってきて建てる、
いわば足し算の住宅であれば、この洞窟住居は引き算の住居ということです。
無駄なものという共通の概念はありませんが、必要なもののみで構築されたと思われる空間はとても居心地がいいです。
この洞窟住居もなんともいえない居心地の良さでした。
プランをしながらこういうことを考えていると、全く手が進みませんが、
「住宅とは?」ということを意識しながら考えることは大切なことだと思います。
そうそう洞窟住居の集落を歩いている時に、自転車に乗った若者に声を掛けられました。
彼の腕に入った「塔」という漢字のタトゥーを指さして、
スペイン語で何ていう意味なの?と訊いてきました。
「torre」と幸いにも知っていたスペイン語で答えてあげると、その若者は喜んで自転車で走り去っていきました。
意味を知らずにタトゥーを入れるのも凄いなと思いましたが、
それより気になったのが、「塔」という文字。
洞窟住居に住みながら「塔」という文字を入れている。。。
なんともユーモアのある彫士さんだったんでしょうね。