数年前に知り合った創作作家「千sen」さんが、事務所にきてくださいました。
つい最近まで世界中を旅されいて、いろんな感覚を得られたのだろうと思い、なぜかこちらが嬉しくなりました。
この度、建具の金物(取手)を製作されるようになったということを聞き、
ぜひ見せていただきたく思い、来ていただきました。
建具の金物といっても多種多様にあります。
「千sen」さんが手がけるのは、真鍮の金物。
真鍮の建具金物はあるにはあるのですが、レパートリーが少ないというのが、
採用し難いところでした。
<千senさんに持参いただいた真鍮の金物。試作品も含む。>
真鍮という金属素材は、気に入られるかどうか極端に分かれると思います。
一旦好きになればとことんまで好きになる素材だと思います。
もちろん私も真鍮は大好きですし、持ち歩いているものの中にも真鍮があります。
好きになる最大の特徴は、最初は鮮明に光っている素材が、使うごと時間が経過するごとに、
鈍く奥行きのある光沢に変わっていくところでしょう。
木も同じく、経年で穏やかに表情を変化させます。
その場所に馴染んでいくというか、使い手により表情を変えるというか、
とても奥ゆかしさを感じることができます。
「千sen」さんのカタログの冒頭にこう書かれています。
次の世代に、そのまた次の世代に受け継がれる金属金物。
使うほどに味が出る。
時間とともに愛着が湧く。
脇役の金物が主役になる。
金属は他の素材に比べると丈夫な素材。
受け継いで受け継いで、千年残るようにと想いを込めて製作しています。
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まさにそのとおりです。
そして一番大切なのが、最後の行の「千年残るようにと想いを込めて製作しています。」
という言葉。
素材とか何よりこれが一番大事ですね。
今日はとてもいいお話ができました。
この記事を読まれている、現在設計中のお施主さんの中には、
「えっ!うちも真鍮なん!?」と驚かれている方もいるかもしれません。
お客さんのイメージや、その空間にあるべきものは何なのかということを、
考えた上でそこに存在すべきものを選択しますので、
ご心配なく(笑)
ただ、真鍮という素材の良さが伝わればと思い書かせていただきました。
千senホームページ
http://senkanamono.com/sen/top.html