旧三井家下鴨別邸

京都の住宅打ち合わせの合間に、旧三井家下鴨別邸を見学してきました。

 

学生時代に下鴨に住んでいたのに、恥ずかしながらまったく触れずにいた建物です。

 

建物の周囲は塀で囲まれ、外部からはなかなかその全容を拝むことはできません。

 

建物の見学の前に、京都で好きな場所のひとつ葵橋から風景を楽しみます。

 

 

15年前に住んでいた時から変わらず、なんとも心が落ち着く美しい景色です。

 

清清しく気持ちも若返り、いざ旧三井家別邸へ。

 

 

1925年に三井家の別邸として建築された建物は、1949年に国に譲渡され、2011年に重要文化財となり、現在京都市が管理しています。

 

 

見学で感じたことを総評すると、晩年の大人の全くイキりのない脱力してもなお繊細な建築。

 

現在の建築と決定的に違うところは、全体に対する廊下の割合です。

 

部屋をつなぐだけの廊下ではなく、廊下にも空間としての意味をもたせている建築の質の高さに感服しました。

 

 

 

 

様々な要素のある素晴らしい建築ですが、すべて書くと長くなるので、ひとつだけ紹介します。

 

 

見てのとおり浴室。

 

一坪ほどの空間に半畳ほどの浴槽。

 

方形屋根の天井の中央に四つの円を組み合わせたような換気口があります。

 

デザインしましたというようなわざとらしさを全く感じさせないほど、すさまじいバランスです。

 

壁の羽目板と天井の羽目の働き幅が違います。

 

同じ貼り方向なのに、なぜ揃えないと思いきや、木製建具の竪子と天井の目地が。。。

 

壁羽目板四枚に対して、天井三枚。

 

建具と天井の間に壁を挟むことで、分からないようにリズムを成立させていることに気づきました。

 

天井と建具の組子の割りが細かくなると、うるさくなるのをうまく解消しているのだと感じます。

 

このようにささやかかつ技巧に満ちた建築は建築に携わるものにとって活力と希望を与えてくれます。

 

とても良き時間でございました。

 

恐悦至極にございます。